頑張らずにチームで成果を出す三つの方法

名誉MBA、元BCG、元A・T・カーニーという華々しい経歴を持つ山本真司さんの最新書籍「35歳からの『脱・頑張り』仕事術」を読了しました。

35歳からの「脱・頑張(がんば)り」仕事術 (PHPビジネス新書)

35歳からの「脱・頑張(がんば)り」仕事術 (PHPビジネス新書)

山本さんの著書は実際の経験に基づいているので説得力があり、さらに実践的なのでとてもおススメです。若手には、「20代 仕事筋の鍛え方」がとてもおススメです。
今回の著書はマネージャー層を対象にしていますが、私のような若手が読んでも非常に勉強になります。
今回はその中でも、特に感銘を受けたところを紹介していきます。

1、「壁塗り」の原則

壁を塗るときは、下地塗りをして、第一次上塗りに入り、仕上げ塗りを行う。ポイントは二つある。各工程では薄くてもよいので壁全体を対象にしている。一部分をじっくり完成させていくやり方ではない。全体を下地塗りし、上塗りへと進んでいく。成果物作りも同じだ。最後の完成版を作るにあたって、いきなり全体を網羅した完成度の高い作品を作るのは無理である。進め方の選択肢は二つ。一部分ずつ完成させる方法。もう一つは壁塗りのように、まずはあらく全体を、次にそこそこ深く全体を、そして最後に完成塗りをしていく、というもの。私のやり方は、もちろん二つ目の方法だ。
それだと各ミーティングで作られた成果物は、その後で追加作業を幾重にも施さないと顧客用には使えないことになる。最後に使わない成果物をたくさん作ったところで時間の無駄、紙資源の無駄だ。
だから各ミーティングでは、最初から感生物のように美しく、綺麗で見栄えの良い作品は要求しない。手書きでもOK、資料がなくてもOK。手ぶらでも良い。対外的に使う綺麗な成果物は、下地塗りが出来たところで丁寧に組み立てれば良い。

最初から100%のものを作ろうとすると、様々なデメリットがあることは私自身も痛感するところです。それよりも、30%程度のクオリティでいいからまず一通り完成させ、それのフィードバックを貰ってまた短時間で仕上げ、またフィードバックを貰う・・・というサイクルを繰り返すほうが結局は高いクオリティのものができます。さらに、時間も圧倒的に短くなります。
この壁塗りの原則はほぼすべての仕事に共通するものです。(作曲家や画家などのアーティストはまた別だと思いますが。。。)これが癖になっている人は非常に仕事ができると感じます。

自分が上司の立場になったら、壁の上塗りを徹底させたいですね。

2、相対的強みで勝負

部下を育成するときの私の大原則は、その部下の「相対的強みを発見し、まずその強みを伸ばす手伝いをする」といううことである。だから、その部下の得意スキルが、必ずしもそのまま世間で一流のものとして通用するレベルでなくても気にしない。その部下が、自信と興味を持って取り組んでくれる分野であれば、それで良い。
まずは、自分が何らかの分野で、全体の仕事に貢献しているという意識を持ち、自分でもできるという成功体験を感じて欲しい。そして、この体験を通じて、自分の仕事能力に自信を持ち、仕事に興味を持ち、自分の仕事へのオーナーシップを高め、自分の足りないスキルを学ぼうという意欲を高めてほしいのだ。

何でもいいからまずは一つ自信を持っているものについて取り組む。これをさせてくれる上司は非常にやりやすいです。不向きなものをたくさん押し付けられ、結局出来ずに怒られ、精神的に壊れていってしまった若手を私はたくさん見ています。不幸なことです。
まずは自分が好きもしくは得意なものに取り組み、自信と周りからの信頼を得ていくといいでしょう。
そうすると、他の業務に対してもポジティブな気持ちで向かうことができます。
上司の立場に立ったら、押し付けるのではなく、自分の意欲で学ぶ部下を育てる意識を常に持っていたいです。

3、「自分史」語らせ作戦

私は、「この部下とは仲良くなりたい」と決めたら、タイミングを見て、その部下の自分史について、根掘り葉掘り聞くようにしている。出身地、家庭環境、小学校から始まる学歴、どういう経緯で今の仕事に就いているか、仕事の課題、人生の目標・課題、個人としての趣味・関心。つまり、自分史を語ってもらう。
なぜ、自分史を聞きたいのか。ただ、ボーっと、自分史を聞いているわけではない。こちらも一生懸命、頭を使う。こちらの言葉と思考回路で部下を理解できるように考える。
その行為自体が、部下に関心を寄せていることを表すことになると思う。人間だれしも、自分に関心を向けてくれる人に、関心を持つものではないだろうか?私自身も、そういう経験が多い。私に関心を向けてくれる人に、良い感情を持つ。だからこれは、部下愛への前奏曲となる行動だと思う。

たびたび無意識にやっていたことではありますが、非常に感銘を受けました。
やはり、自分に興味を持ってくれる人間にはなついてしまうものです。「オレの若いころはなぁ!!」という話しかしない上司と、「きみはどのような人生を送ってきたのか、じっくり聞かせてくれないか」という上司を比べたら差は歴然でしょう。タイミングさえ間違わなければ、とても強力なツールとなり得ます。このスキルはビジネスパーソンだけでなく、学生にも学んで欲しいところです。